天皇杯 05/1/1  (4) 閃光・忍耐・結実の時
日は西に傾き、アウェー側から強い光がピッチを覆う。前半もそうだが、かなり見づらい。前半あえてホーム側に攻めて先制点を取ったことは、プランとしては成功だったのか。
ジュビロの交代は、前田→中山だった。これ自体は意外ではなかったが、同時に当然、藤田を投入してくると思っていた。余裕か、それともプラン通りなのか。ただ、いつものイメージからすれば、ヴェルディとしては少し楽にさせてくれる交代だったように思う。
ヴェルディは山田をひとつインサイドに、柳沢を右サイドに置く。守備から入ることを考えれば、これは合理的な布陣。
後半キックオフ。
長いボールに山田が長い距離を執拗に追い詰める。キャプテンの決意を感じる。しかし最初のビッグチャンスはジュビロ。名波のアーリークロスを李がかぶったところに中山が入り、最後はグラウがプッシュ。相馬がカバーに入ったこともあり、シュートは外れたが、後半のジュビロの狙いが明確に見えるプレー。
ヴェルディは引き気味ながら要所にプレスをかけ、奪ったボールを林、大悟らを経由して前線につなげようと試みる。意地というか、ただでは退かない、という意識。それが、意外な展開を生んだのかも知れない。
ジュビロ、自陣内のスローインから名波へ。ここから福西へと当てるパス。ここまではイージー。しかし大悟と平本がタイミングよく反応して福西を囲むと、福西がボールコントロールをミス。平本が強引にボールを奪う。センターサークル内。ゴールまでの距離、約50メートル。
一瞬、平本の身体が沈み込む。力強く前に出る独特のフォーム。細かいタッチでボールを前に持ち出し、グイグイと加速する。名波のスライディングをかわし、服部の寄せをハンドオフ。ペナルティエリアまで侵入すると田中誠がコースを切りにきたが、構わず力強く左足を振り抜いた。
グラウンダーのシュートが、佐藤洋平の指先を抜けた。声が詰まりそうになる。そのまま、ボールは右サイドネットへと吸い込まれていった。前半8分、2-0。
歓喜というよりも、驚喜に近い。勝てるとか、嬉しいとか、そうした気持ち以前に、何かが弾けるような気分だった。
続けて前に出る。林のスルーパスに長い距離を疾走した山田が抜け出し、ミドルを放つがこれは枠を大きく越える。「宇宙開発」という単語が、数年ぶりに脳裏を掠める。
しかし、ヴェルディのチャンスらしいチャンスは、ほぼこれで打ち止めとなる。あとはひたすらにジュビロの猛攻が始まった。
最初はまず、名波とのワンツーから西。これは高木が弾いたが、これ以降、ヴェルディの守備は最後まで西を捕まえ切れなかった。川口、藤田を順次投入するジュビロベンチ。圧力をさらに高める。
下がり気味に名波が構え、福西はゴール近くに陣取って、中山と共にターゲットとなる。サイドを空けて名波を捕まえにいけば、川口が上がってくる。タッチラインから開放されて自由を与えられた西が、ヴェルディ陣内で神出鬼没に暴れまわる。名波にプレスがかからない。FKのようなクロスが立て続けに上げられ、ゴール前で制空権を握られる。厳しい。胃が縮み上がる。プレスをかけようにも、平本も大悟もスタミナ切れだ。平野はまだか、と祈るように見るが、オジーは動かない。肝っ玉が据わっているのか、それとも、動かすことに恐れがあるのか。
藤田が思ったよりもゲームに出てこない、と思っていた矢先、ペナルティエリアすぐ外で林のファウルを誘うドリブル。名波のFKに絶好の距離。後半はまだ20分近くある。1点差になると厳しい。
藤田と名波がボールの傍にいたが、まず名波が蹴る。少なくとも高木は名波が蹴ってくる方に張っていたのではないか。呼吸をおいて、最後に名波がボールを直し、キック。壁を越えたボールがサイドネットへの軌道を描いた、が、これを高木が左手一本で弾き出した。まさに、1点に値するプレー。ゴール前に選手の輪ができる。
しかしジュビロは下を向かない。その5分後に、追撃弾。名波のクロスを中山・福西が落とし、西が最後に至近距離からの強シュート。2-1。まさしく肉迫する。
やり方は徹底している。プレスがかからない名波からのクロスが、徹底的にペナルティエリアへと打ち込まれてくる。恐るべき精度で。福西が競り勝ち、シュートはポストを掠めていく。心臓に悪い。高木、思わずゴールポストを撫でる。さらに福西がペナルティエリアで富沢に倒されるシーンもあったが、これはノーファウル。ファウルでも不思議ではないシーンだったが、福西が再三にわたってシミュレーション気味のプレーを繰り返していたツケがまわったか。もっとも、柏原主審はおおむねこんな調子であったが。
さらにピンチは続く。ロスタイムに突入。浮き球に福西が競り勝ち、落としたボールに中山が詰める。高木が身体を張って防ぎ、追撃の福西のシュートも弾き出す。高木と富沢が倒れ、少し間を空ける。ギリギリの攻防が続く。
ロスタイムは2分。ポケットの中にあった、もうひとつの緑の紙テープを握り締め、もっと早く時計が動くことを祈り続ける。もう少し、もう少し。
ジュビロ、最後の攻撃をペナルティエリアで跳ね返す。ボールを拾った柳沢が一気に駆け、そして次の瞬間、主審の手が挙がった。

高らかに鳴るホイッスル。一瞬の間を置いて、冬の夕焼けに舞う緑色のリボン。
選手全員、いやベンチも、ファンも、全員が腕を天に突き上げる。
8年待った、歓喜の瞬間。
眼の奥が熱くなり、元日の夕日が、ぐにゃりと歪む。
自分でも、こんなに涙が出るとは、思わなかった。
これほど望んでいたとは、思わなかった。
チャントが響く。振り絞ろうとしたチームへの愛の歌は、しかし嗚咽に押し戻されて、声にならなかった。
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by eixeix | 2005-01-28 01:32 | サッカーとか。
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