天皇杯 05/1/1  (2) 熾烈・先制・落とし穴 
試合開始前、コンコースにサポーターが集う。サポーターズミーティング。応援に関するいくつかの確認事項があり、そして否応もなく気勢が上がる。歌声が通路の天井に跳ね返り、さらにテンションをかき立てる。
ヴェルディの、いわゆる「ゴール裏サポーター」は、人数だけで言えばJ1で最も少ないかも知れない。J2をあわせても、下から数えた方が早いのではないか、と思うことがある。これまでの歴史の中で失ってしまった人々がいて、そしてある者は残り、ある者は新たに加わった。僕はこれまでに、幾度となく「なぜヴェルディのサポーターなの?」と聞かれたことがある。そういう時、僕はあいまいに「何か理由が必要なの?」と答えてみたりするけれど、実はそれほど、説得力のある理由を持ち合わせているわけではない。読売クラブの延長、という思いはもちろん一部にあるけれども、しかしそれだけではないことも、また事実であって。ただ考えるのは、何かを嫌いになるには理由が必要だけれど、何かを好きになるには、それほど大きな理由は必要ないのだ、と思うことにしている。
ヴェルディを応援するために集まった人たちにも、多分、それぞれに理由があり、そして理由や理屈を超える感情を、このチームに抱いている。それぞれの熱量を単純に比較することは出来ないけれど、少なくとも、思っていることはひとつだけだった。

向こう側に陣取るのは、昨年の天皇杯覇者・ジュビロ磐田。2ndステージは不調にあえいだが、準決勝で浦和レッズを倒して上がってきている。単純に戦力比較だけなら、磐田の方がやや上だろうか、とも考える。老練なパスゲームと、試合を決定付ける力を持つベテランが控える。少なくとも、ヴェルディの得意な相手ではない。それだけに、むしろ期待が高まる。
試合前の川渕氏の書初めやらマイクパフォーマンスはご愛嬌として、選手の紹介が進むに連れ、言いようがないほどの感情の高ぶりを感じる。浮き足立つ。主審・柏原丈二の名前が告げられたときに、スタジアムにどよめきが走ったことも付け加える。このときから、確実に嫌な予感はしていた。日を浴びて、選手がピッチへと現れる。誇らしい気持ち、緊張、かすれそうになる声と、なぜかこの数年のヴェルディのことが、走馬灯のように思い起こされる。いくつもの負けゲームと、いくつかの勝ちゲーム。不思議な気分だった。
選手がピッチに散らばる。キックオフの笛が高らかに鳴り、緑色の紙テープがゴール裏を舞う。決勝戦が始まった。
試合は最初、中盤を握るためのプレス戦から始まった。スピードの遅いパスは狙いの的となり、どちらも寄せが早く、ボール際での戦いが白熱する。ヴェルディもジュビロも短いパスの合間に長いパスを時々からませて、やや中盤を飛ばしたプレーに攻撃の糸口があるように思えた。緊張感のある中盤の攻防は、予想通りの展開とも言えた。それ以上に目についたのは最終ラインの動きで、いつもよりも3バックがラインからブレイクするタイミングが早めで、追い込むスピードもあった印象。ジュビロのクサビを潰すことは出来ており、中盤で攻勢を握らせない手立てとしては正しい。その一方で、バイタルゾーンで前を向かれることがあったときはフィニッシュ近くまで持ち込まれており、一筋縄ではいかないな、という感じ。
ヴェルディのチャンスも長めのパスから生まれた。最初のチャンスは、短いパスをゆっくり目のリズムで刻みながら右サイドまで展開し、そこから一気に米山のロングフィードで山田、平本とつないだもの。山田のヘッドでの落しに平本がキーパーの眼前へと詰めるが、右足のボレーシュートはあらぬ方向へ。ゴール裏、一様に天を仰ぐ。さらには予想通りの柏原主審の細かい笛もあり、セットプレーからチャンス。珍しく相馬が蹴ったFKを、これも平本がゴール前フリーでヘディングシュート。しかし今度は叩きつけたボールが大きくバウンドしてゴールを越えるという次第。「なんであいつのヘディングは入らないんだ!」と思わず叫んで、周りの人に笑われる。ジュビロも前田の突破や、グラウ、西らの遠目からのシュートでヴェルディゴールを脅かす。加えてセットプレーからの福西の高いヘディングと名波の正確なFKは、どこのチームにとっても脅威だ。うかうかしていたら、先にゲームを持っていかれそうだ。
しかし、ここで均衡が破れる。前半残り10分。右サイドから大悟のFK。ゴール前で上手く抜け出した平本が低い弾道のボールにヘッドで合わせる。これはまたしてもポストを叩いたが、今度は跳ね返ったボールに飯尾が詰めていた。先制点はヴェルディ。ユニフォームをまくり、下に着けた「16」を誇示して、飯尾はピッチ脇にいた桜井へと一直線に駆け寄っていった。
ヴェルディにとっては、どうしても欲しかった先制点。しかし、ここから腰が引けるというか、取り返しに来たジュビロに気圧されたのか、ヴェルディのボールの失い方が悪く、後手を踏む。そうした流れの中で、事件が起きる。前半終了間際、ジュビロ陣で奪われたボールを、カウンターから福西がドリブルで突破。止めようとした慶行の足がかかり、今日2枚目のイエローカードを、柏原主審が高々と掲げる。
「やはり、こういう風になるのか・・・・」。カードでしかゲームをコントロールできない主審であるがゆえの、必然の退場劇。
顔を覆って肩を震わせ、慶行がピッチを後にする。
ゲームはまだ、半分を残していた。
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by eixeix | 2005-01-14 02:25 | サッカーとか。
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