つまり社会の中において、企業とか組織とかの必要性というのは、時代によって要求される中身が当然に変遷していくものであって、その中で新しい順位付けなり、淘汰なりが起きるのは当然の事であって。
で、あるからして、ヴェルディのサポーターとしての僕は、クラブの存続を強く願いつつも、一方で「しかし、社会に必要とされなくなった企業に存在意義はあるのか」と思ってもいた。サポーターという「優良顧客」が熱望する唯一無二の商品を生産する企業が無くなるとすれば、それを悲しむのはごく当たり前なのだけれども、しかしその商品がこの国において、あるいは世界において、すでに陳腐化し、その必要性を消失し、内発的な刷新の可能性をも失っていると看做されたとすれば、果たして救うに足る企業であるのか、と問い直さずにはいられないのも、また当然の事なのではないか。 幸いにしてヴェルディは男子サッカーという唯一の商品だけを販売する企業ではなく、日本一の女子チームや優れた下部組織、他競技を含めた、日本でも特殊なラインナップを持つクラブであったが故に、その必要性を社会に再び認めてもらえたのだと思う。まだこのクラブが「社会にとって必要である」と認めてくれる人がいたという事に僕は率直に安堵した。それは長い時間をかけて蓄積してきた、字義通りの「資産」であって、「財としての人」の重要性を思うと共に、そうした可能性をもたらしてくれた先人達の功績と記憶(あるいはノスタルジー)を、まだ慈しみ、再生の原動力に変える力になりうると看做してくれたのだろうとも思う。 例えば日テレによる経営体制があのままで、この破綻劇が5年遅れて発生していたならば、こうしたチャンスはなかったのかも知れない。そこもまた巡りあわせなのかと思いもする。 とにかくも、ひたすらクラブ存続のために尽力して頂いた関係各位ならびに、新たなスポンサーパートナーや出資者の皆様方には、謹んで感謝と尊敬の意を伝えたく思います。 そうした状況にあって、チームもまた戦いを継続していくわけですが、残念ながら大分には0-1での敗戦。 いくつか持っていた懸念材料が出てきてしまっているのかな、という辺り。 序盤、平本に当てて展開という形から幾本もチャンスを作れていたわけですけれど、そこでなまじチャンスがあったために大分の守勢を強めてしまったというのと、やはり取り切れなかったというのが厳しくなった部分。 前半の大分は不用意なボールロストが多く、ボール運びにもぎこちない部分があり、ヴェルディとしては比較的楽にボールを奪って運ぶ事ができていたわけですが、結果的に大分が早いリトリートを見せるようになり、やはりカウンターをもらわないようにという意識が働いたのか、攻め手が遅くなってしまったな、というのが残念なところ。一方でコンディションも難しくなってきたな、というのも見えてきていて、もちろん、研究されて対応されている部分もあるんだろうけれども、それでもアクションが一歩二歩遅い感じがするし、球際でももう一押しが出せなくなってきていて、運動量が上がらないとゾーンの距離感が悪くなってくるわけだから余計に悪循環になってしまったなと。 後半、先制された後、大分はもう完全にリスクある攻めを放棄したかのような振る舞いで、しかもそこでの成功が(短期的にであれ)自信になっているのが伺える堅実な守りを敷いていて、ちょっと付け込む要素がないな、と思っていました。(多分、先制点以降の大分って、シュート撃ってないんじゃないかな) そういう要素が絡むと、後はもう、確率の低いプレーになってしまうのは、ある意味仕方が無いんじゃないかと。ワンツーを使う、ピッチを広く使う、運動量を上げていく、それはそれで全部その通りだけども、大分のサイドまで深く引いた堅陣を破るには、単に普段のやり方の延長だけではダメで、何度も動きなおしたり、寄せられた状態でもボールコントロールのところでアイデア出したり、そのアイデアを信じて一歩早く動いたりとか、スタミナやアジリティの部分で高いものが要求されてくる。今のチームスタイルはそういう前提に立って構築されているはずで、十分な運動量が出せなければ、結果的には停滞してしまうのが目に見えているのだから、戦術的な停滞感とコンディショニングの問題は、かなりイコールな関係のように思う。 だから個人のスキルや、選手の入れ替えの影響というよりは、むしろ全体で統一感を出して運動量を上げていけるようにしないと、やっぱり苦しい。それが「可能か?」と聞かれると、今のチームでは「厳しい」というのが現実なんだろうと。でもそこであきらめずに前進していかないと、やっぱりチームとしては進歩が無いわけだから、むしろメンタルの部分はそこに使うべきものだと思う。「気合がないから試合で動けないんだ」とかいうレベルではなく、「試合で動けるように気合を使っとけ」という話。 そういう内容を再確認しなきゃいけないのは、ある意味で後退なんだけど、でもそこを大事にしないと、チームとしては向上できないわけだし。 現実的な勝ち点だけを見れば、昇格の可能性というのは非常に小さくなった。それは認めなきゃならない。もっと厳しい言い方をすると、「来年も今の戦力で継続強化できれば今度こそ昇格を狙える」という考えも甘い。というより、むしろ今年の方が昇格の可能性は高かったかも、ぐらいの話になると思う。積極的な補強が出来ないという事は、現有戦力が敵チームの対応スピードを上回れないと早晩手詰まりになるという事で、まして金銭による選手の繋ぎ止めすら困難な状況では、戦力を上積みするのは容易な話ではない。 ただそれでも、選手達がこのクラブに愛着を持って、自分達の可能性を信じて戦ってくれれば、サポーターはついていけるし、賛同してくれる人々もきっと現れると思う。 とにかく、困難でもやり続け、やり抜くしかない。 与えられた可能性を、今度は自分達で守るしかない。 シーズン最後までやり抜いて、そこに何か残るものがあれば、またそれを大事に育てるチャンスが来年また巡ってくる。 それは、嬉しい事だと、今は思う事にする。
by eixeix
| 2010-11-02 01:48
| サッカーとか。
|
ランド日記
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